ベーゼンドルファー1920 演奏とお話vol.2 「音楽の力、音楽の無力」を開催しました。

ベーゼンドルファー1920 演奏とお話vol.2 「音楽の力、音楽の無力」を開催しました。

この公開講座は、大阪大学会館に設置されている1920年製のベーゼンドルファー社製のピアノ演奏と、本学教員および外部専門家らとの対話によって導き出される学術的知見の深化を目的として開催しました。

東日本大震災の発生からほぼ2年が経過する2013年3月10日に実施し、演奏とお話、厳選された作品群を通して、災害等があった際に音楽に何ができるのか、という問題にも触れながら、「音楽の力、音楽の無力」というテーマのもと、音楽のもつ力・可能性について考えました。

この度の実施にあたり、世界で活躍する作曲家・権代敦彦氏に作品を委嘱し、「音楽の力、音楽の無力」というテーマに基づいて、「指の呪文 ピアノのための作品135」を作曲していただきました。世界初演となった同作品には、委嘱テーマに対する作曲家の強い思いが込められ、来場者から大きな反響がありました。また、ピアニスト・北村朋幹氏の演奏が感動的であったとの声も多く聞かれました。伊東信宏教授(文学研究科)と権代氏のトークでは、楽曲や作品構成のなかに見出される音楽の力が解説され、被災や災害等に際して作曲するプロセスや作曲家の思いが語られました。専門的なトピックがわかりやすく説明され、大学での実施ならではの学術的な内容であったと大変好評でした。途中、北村氏もトークに参加し、普段の演奏会では聞くことのできないピアニストとしての貴重な意見を語ってくれました。

当日は雨天にも関わらず、300名以上の方にご来場いただき、盛況のうちに終了しました。

事業終了後、企画にも関わってくださった伊東教授よりコメントを頂戴しました。

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「音楽」というものは、現代では「余暇」や「息抜き」の方へ追いやられ、「主要五教科」からは外され、「実社会」よりは「個人の内面」の問題へと矮小化されています。そしてそのような個人を「勇気づけ」てくれたり、「癒し」てくれたりするもの、というところでだいたい話がまとまってしまうことが多いようです。東日本大震災から2 年を経て開催された今回の演奏会で問いたかったのは、音楽には本当はもっと根源的な力があり得るし(それだけに見くびっていると音楽によって恐ろしいことも起こり得るし)、逆に言えば音楽に即効的な「効果」を求めても裏切られるだけなのではないか、ということでした。
作曲家権代敦彦さんは、このようなテーマに真っ正面から応える過激な作品「指の呪文」を書いてくださり、この演奏会でそれを世界初演することができました。当日語られた権代さんの言葉を借りれば、音楽は形がなく、生まれては消えていくものであるが、まさしくその故に形あるものよりも大きな力を持つこともある。それこそが「音楽の力」だと言えると思われます。そして、若いピアニスト北村朋幹さんは、この権代さんの作品を含む要求の多いプログラムを渾身の力で演奏して下さり、聴衆に深い印象を残しました。
今回のテーマはとても重く、その射程は深いと思われます。今回の演奏会ではまだその一端を示したに過ぎない、とは思っていますが、学術、文化及び教育を通じた市民・社会との連携を推進する21 世紀懐徳堂と共同しながら、今後もこのような取組みを続けて行きたい、と考えています。

伊東信宏(文学研究科教授・音楽学)

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【実施詳細】

2013年3月10日(日)14:00開演 於:大阪大学会館講堂(豊中市待兼山町1-13)

【出演】

伊東信宏(音楽学者・大阪大学大学院文学研究科教授)

権代敦彦(作曲家)

北村朋幹(ピアニスト)

【内容】

■プログラム

権代敦彦: カイロス~その時~ ピアノのための作品128

シェーンベルク: 6つのピアノ小品 作品19

ベートーヴェン:ピアノソナタ第31番変イ長調 作品110

権代敦彦: 指の呪文 ピアノのための作品135 [委嘱新作・世界初演]

■トーク

伊東信宏、権代敦彦、北村朋幹

チラシは こちら(PDF/1.58MB)

実施後のアンケートでは、9割以上の来場者が「非常に満足」もしくは「満足」と回答、学術的側面と芸術的側面、いずれも充実した内容で高い評価を得ました。

■来場者の感想(アンケートより抜粋)

・楽曲とお話と演奏全てに感動しました。(20 代女性)

・演奏とお話の2 パートあり、曲について理解した上で聞くことができました。(20 代女性)

・音楽の持つ破壊と創造、再生を見せつけられた、と感じました。「音楽には力がある」と言い得る、その可能性を含むこと自体が音楽の力であり、希望なのだと感じました。(20 代女性)

・今後もピアノを活用した講座を開催されることを希望します。(30代男性)

・権代さんの作曲のプロセスのお話と北村さんの祈るような演奏が大変印象的でした。(30 代女性)

・大変いいコンサートです。ベーゼンドルファーも素晴らしい音でした。(40 代男性)

・言葉を尽くしきれない感じがしました。引き続きやってもらいたい内容でした。(40 代女性)

・聴く前と聴いている途中で、明らかに変化があるということはやはり音楽には力があると思いました。(40 代女性)

・音楽の持つ力を感じました。(50 代男性)

・「指の呪文」は3.11 の光景と重なるものがありました。(50 代女性)

・対談および解説もわかりやすく、作品、演奏に対する関心がより強まった。今後もこのような企画を、ぜひとも続けてください。すばらしい!!の一言です。(50 代女性)

・タイトルにふさわしい、あるいはそれ以上の内容の濃いトーク&演奏でした。(60 代男性)

・どこのホールにもあるスタインウェイではなく、阪大の源流の一つである記念すべき講堂に歴史的ピアノが設置されたことをうれしく思います。ウィーンの森の近くで生まれたピアノが100 年近い歳月を経て、この待兼山の地へやって来た縁を感じられずにはいられません。(60 代男性)

・(委嘱作品「指の呪文」について)大学が依頼した曲とのことで、大変素晴らしいと感じました。(60 代女性)

・作曲家、ピアノ演奏、ベーゼンドルファー、この会場。今の日本人の心にしっかり響きました。(60 代女性)

・生まれて初めての体験をした、すごいピアノでした。(70 代男性)

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