フィールドで得た知識は誰のものか?―民俗的知識と知的所有権をめぐる「倫理」の不確実性

  • place 吹田キャンパス
  • その他
フィールドで得た知識は誰のものか?―民俗的知識と知的所有権をめぐる「倫理」の不確実性

フィールドワークは―それが学問的な調査であろうと、開発プロジェクト のためのパイロット調査であろうと―、フィールドから何らかの「知識」 を得るために行われる。フィールドワーカーは、フィールドで出会うさま ざまな人々から、自分の調査にとって必要な情報を聞き出す。それでは、 そこで得られた知識は一体「誰のもの」ということになるのだろうか。 本セミナーでは、フィールドから得られる知識とその所有権をめぐって 近年どのような倫理的な問題が生じているか、生物資源の分野に焦点を 当てて考える。

カテゴリ その他
日時 2011年6月22日(水) 18時40分から20時10分まで
会場 大阪大学人間科学研究科東館207教室(吹田キャンパス)
主催 大阪大学グローバルコラボレーションセンター(GLOCOL)
問い合わせ先 大阪大学グローバルコラボレーションセンター

http://www.glocol.osaka-u.ac.jp/research/110622.html

【講師】中空 萌(東京大学大学院総合研究科博士課程)
【参加】無料・事前申し込み不要

近年、伝統医療で使われる植物や農民の開発種を利用した製薬開発が注目を集め、そうした資源や知識を求めて、科学者たちが途上国の農村や先住民コミュニティにおいてフィールドワークを行うようになっている。そして、そのような科学者に対し、「現地の人々の知的所有権を尊重し、彼らに製薬から生まれる利益を公正に配分しなければならない」という倫理が、生物多様性条約などの国際条約において課せられている。しかし多くの国でこの条約に即した国内法が未整備であるため、実際に誰に対して、どのように、どの程度利益を配分するかは、現場のフィールドワーカーの判断に委ねられている。このような不確実な状況の中、フィールドワーカーたちは、どのように現地の人々の知的所有権を尊重するための工夫をしてきたのか。ここでは米国生物多様性グループのプロジェクトや講師自身がインドで行った調査などのケースをもとに、この問題をめぐる倫理の不確実性とその「引き受け方」について考えてみたい。

※ 本セミナーはGLOCOL科目「フィールドワークの実践と倫理」の授業の一環として行われるものですが、一般公開とします。


【講師略歴】中空 萌
東京大学大学院総合文化研究科博士課程(文化人類学専攻)/日本学術振興会
専門は、文化人類学、科学技術社会論、法社会学、南アジア研究など。
一橋大学在学中に、オーストラリア、ベトナムにおいて留学、インターンシップを経験、そこでの先住民や少数民族との出会いから、文化人類学の研究を志す。
東京大学大学院進学後、2009年よりインドでデリー開発途上社会研究センターに客員研究員として所属しながら、北部のウッタラカンド州において、伝統医療の製薬化と知的所有権について約2年間のフィールドワークを行う。

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