[イベントレポート]第48回大阪大学公開講座 前期-5「あたらしい金融技術と老後資金」

[イベントレポート]第48回大阪大学公開講座 前期-5「あたらしい金融技術と老後資金」

2016年10月14日(金)に開催した、第48回大阪大学公開講座、前期第5回「あたらしい金融技術と老後資金」の開講レポートです。21世紀懐徳堂学生スタッフ、佐藤が執筆しました。

48回目を迎えた今年度の大阪大学公開講座は、前期テーマを「老いの未来」、後期テーマを「若さの将来」と題して、全16回の講義を行います。文学、宇宙科学、また医学など様々な分野の研究者が登壇します。

今回は、大阪大学大学院法学研究科の松尾健一准教授に講義していただきました。

matsuo.p (写真:松尾 健一准教授)

この講義は、FinTech(フィンテック)と呼ばれるあたらしい金融技術が老後の資産の管理や運用にどのような影響を与えるのかを説明するもので、まずFinTechとは何かというお話から講義が始まりました。

FinTechとは、Financial(金融)とTechnology(情報技術)を掛け合わせた造語のことで、発達した情報技術を活用して金融サービスを革新する動きのことを指します。

インド、中国、アメリカなど多くの国家が国を挙げてFinTech関連産業へと投資をしています。日本においても、現在、官庁、民間の銀行が特に力を入れて取り組んでいる分野だそうです。

新聞などマスコミで頻繁に取り上げられている一方、まだ日本では多くの人々に十分に理解されているとは言えないFinTechですが、多くの生活上の便益をもたらしていることを松尾准教授は説明されました。

たとえば、FinTechを活用することで、どのようにお金を使ったのかをデータとして蓄積することができるため、消費者個人は支出の見直しや保険金融商品の提案を受けられるなど、ライフプランの設計に活かすことができます。

また、事業主にとっては、「誰が」「何に」「どのくらい」のお金を使ったのかをデータとして利用できるようになることから、ビジネスの適正化に役立てることができます。

今回の公開講座のテーマである「老いの未来」と関連させて、老後資産の運用という観点では、ロボットがアドバイザーとなり、利用者個人の消費性向を分析して、本人に合った運用プランを提案してくれることも今後期待できるそうです。

以上のように、発展途上にあるFinTechは様々な便益を私たち消費者にもたらしてくれるようです。

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一方、このような便益の引き換えとして、リスクの存在についても松尾准教授は言及されました。

これまで投資取引をめぐる高齢者、証券会社間でトラブルが発生した際に、裁判所が証券会社に損害賠償責任を認めた例は多くありました。

しかし、FinTechが広まるにあたって特に注意が必要な点は、インターネット取引という形態であることにより、証券会社の「勧誘」の要素が認められにくい点です。これにより消費者が適切な法の保護を受けられないことが発生し得るそうです。

消費者である我々は、このようなリスクにも十分に注意を払ったうえでFinTechと付き合っていかないといけないようです。

そして、講義の最後の質疑応答では、参加者から多くの質問が挙がりました。

kouzakaijyou

「仮想通貨は本当に信頼に足るものなのか。犯罪に巻き込まれる危険性は高まらないか。」という質問に対して、松尾准教授は、暗号技術を初めとしてFinTechに関わる様々な技術が開発されていることから、現在消費者が利用しているサービスに比してより危険になるとは言えないと考えられているとのことでした。

講義の総括として、再度、様々な生活上の便益を与えてくれるFinTechの理解を深めつつ、リスクにも十分な認識をもって付き合っていくことが大切であるということを松尾准教授は強調されました。

FinTechというあまりなじみの無いテーマであったものの、松尾准教授が様々な具体例を用いながら、丁寧に分かりやすく解説してくださったことが大変印象的でした。

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